- ■2008/07/03
第四回「危ないロンドンの地下鉄」 - ■2008/06/30
賄いムービー - ■2008/05/08
第三回 あなたは『おぎゃあ』派ですか? - ■2008/05/01
第二回 増上寺の入れ歯 - ■2008/04/17
第一回 鶏の首の気持ちで - ■2008/04/16
2000年/テアトロ11月号より - ■2008/04/16
向こう岸に行った人々 基本に戻ってノストラダムスの巻 - ■2008/04/16
「おとなぴあ 2000年4月号」より - ■2008/04/10
第52回岸田國士戯曲賞選評(2008年) - ■2007/12/07
『キル』 - ■2007/06/27
『THE BEE』 - ■2007/01/29
第51回岸田國士戯曲賞選評(2007年) - ■2006/01/30
第50回岸田國士戯曲賞選評(2006年) - ■2005/12/06
『贋作・罪と罰』 - ■2005/05/01
『野田版 研辰の討たれ』 再演 - ■2005/01/31
第49回岸田國士戯曲賞選評(2005年) - ■2004/12/03
『走れメルス』 - ■2004/08/01
『赤鬼』 - ■2004/03/01
『透明人間の蒸気』 - ■2004/01/26
第48回岸田國士戯曲賞選評(2004年) - ■2003/08/01
『野田版 鼠小僧』 - ■2003/01/27
第47回岸田國士戯曲賞選評(2003年) - ■2002/01/28
第46回岸田國士戯曲賞選評(2002年) - ■2001/08/01
『野田版 研辰の討たれ』 - ■2001/06/01
『贋作桜の森の満開の下』 - ■2001/02/03
『2001人芝居』 - ■2001/01/29
第45回岸田國士戯曲賞選評(2001年) - ■2000/09/08
『農業少女』韓国公演 - ■2000/01/31
第44回岸田國士戯曲賞選評(2000年) - ■1999/01/25
第43回岸田國士戯曲賞選評(1999年)
第49回岸田國士戯曲賞選評(2005年)
《逆さ蟻地獄》と《ぎぇ~!》
岡田利規氏の『三月の5日間』は、読み始めた瞬間から、え? え? え? と思いながら奇妙な路地に迷い込んだ。そして、にやにやしつつ、一気に読めた。読み終えたら、渋谷のラブホテルから出てきていた。そういう感じである。同じところを何度も繰り返しながら、微妙にずれて、先へ進む。進むというより、堕ちていく感じがある。しかも、下へ落ちるのではなくて、上へ落ちていくような気がした。いわば、《逆さ蟻地獄》に嵌った感じである。渋谷の町を、ラブホテルへ逆さに引き返して行く件、決めたわけでもなく五日間ラブホテルで過ごす破目になっていく過程、そして、その五日の閉塞された享楽のうちに、始まったばかりのイラク戦争が終わってはいないかと、ふと頭をよぎる瞬間、その一つ一つが、実に生々しい今の若い日本人である。それを見事に描ききった岡田氏は、出会ったことのない才能である。いよいよ出てきたというべき才能かもしれない。或いは、どこに隠れていたのよ、というべき才能。もしかしたら、買いかぶりすぎと呼ばれるかもしれない才能。そう言われないためにも、今後、どんどんいい作品を書いていただきたい。応援します。応援しますって言うのも、どうだろう。
宮藤官九郎氏の『鈍獣』は、鈍感であるがゆえに《弱者》が、《強者》に変わっていくことを鮮やかに描ききった。天晴れである。前半部分は、ここ数十年、日本の漫画が若い日本人にもたらした、日本語の破壊を、無意識に体現している。それに限って言えば、宮藤氏に始まったことではない。ちょいと気の利いた若い奴等の会話には、漫画の噴出しの言葉と、漫画に教育された発想の数々が、飛び交っている。深夜のテレビを見れば、若い(と言っても三十代だが)お笑いタレントたちが、その突飛な発想を競い合っている。宮藤氏は、そういう危ういところとのボーダーにいる。立っている場所は危ういが、言葉の運びがまことに上手い。そして、この作品の成功は、むしろ後半部分にある。《弱者》が、繰り返し繰り返し生き返ることで、(まさしく、その生き返り方には、根拠がなくまことに漫画なのであるが)そのことで、《弱者》が、《強者》を脅かし、ついには、逆転していく。何故生き返るかといえば、その《弱者》が痛みに鈍感であるからだ。それは、今の日本の漫画の世界では、痛みが鈍感に描かれていることと無縁ではない。仮にそれが暴力的な漫画だとしても、いや、暴力的であればあるほど、「ぎぇ~!」などという声は、鈍感な痛みの表現でしかない。宮藤氏は、そうした《鈍感な痛み》を共有する世代に生まれ育ち、それと戯れそれを描きながら、その鈍感な弱者を告発している。強者を告発するだけであれば、凡作に終わったであろうが、弱者を告発したところに、この作品の秀逸さがある。これまた、応援します。












