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第43回岸田國士戯曲賞選評(1999年)
第三回 あなたは『おぎゃあ』派ですか?
このまえ知人に、携帯メールで、「え?げ!ぐえ~!おぎゃあ」と送ろうとした。
ま、どういう状況で、52歳の劇作家がそんなメールを送ろうとしていたかは、謎だということにして、その「おぎゃあ」のために、「おぎや」と文字を入れたら、「おぎやはぎ」という言葉が選択される言葉のトップとして現れた。
わたしは、「え?げ!ぐえ~!おぎゃあ」とメールで送る人間ではあるけれども、断じて、今まで、日本のお笑い芸人の話題なんかをメールでやり取りした覚えはない。
どういうわけなのだろうと思っていたら、どうやら、一般的にメールでやり取りされる頻度の最も高い言葉だから、一番先頭に出たらしい。だが、それにしても、携帯メールで「お」と「ぎ」と「や」という文字を入れている日本人の中で、最も使われている言葉が「おぎやはぎ」であるという事実を、どう考えればよいのだろう。
携帯メールで「おぎゃあ」と書く日本人よりも「おぎやはぎ」と書いている日本人のほうが今や多いのだという事実。確かに「おぎゃあ」も「おぎやはぎ」もどっちもどっちのようなきもするが、それにしても「おぎやはぎ」の方がマジョリティで「おぎゃあ」の方がマイノリティであるという事実。
もちろん携帯メールであるから、使っている人間は若い人が多い。しかも彼らはのべつまくなしに使っている。「あのさ、おぎやはぎがさ」「え?おぎやはぎ?」「どっちがおぎかわかんないけど、そのおぎやはぎってさあ」「そういえばおぎやはぎ、わかんないね」の様に、頻繁に使われているのは想像に難くない。授業中に、いろんな絵文字とかがちりばめられながら「おぎやはぎ」が、80回ぐらい繰り返されるのだろう。確かにそう考えてみれば、携帯メールで「おぎゃあ」と書く方が特殊だろう。え?赤ちゃんプレイ?やってるの?みたいに疑われるも癪だが、何故私が「おぎゃあ」と書いたかはやっぱり明かさない。
その上でわたしは、敢て聞いてみたい。
あなたは、『おぎゃあ』派ですか?『おぎやはぎ』派ですかと。
そして、今、書いてみて知った。
『おぎゃあ』派ですか?『おぎやはぎ』派ですか?は、立派な早口言葉になるということを。
野田秀樹
(*)賄いエッセイ、使用上の注意
この賄いエッセイは、残り物ですから、絶対に身のある話が掲載されることはありません










