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『農業少女』韓国公演


初めに、私の書いた戯曲が、韓国で初めて上演されることに、心からお礼を申し上げたいと思います。
五年前に日本語で書かれたこの芝居が、他の国の言葉にこうして翻訳されて上演されるというのは、作家冥利に尽きるというものです。

作家というのは、書きっぱなしで、こうして忘れた頃に、誰かがどこかで作品を上演してくれるわけですから、実に気楽な商売だと、改めて感じました。
ただ普段、私の書いた芝居は、私自身で演出することが殆どです。日本でも、他の演出家が演出することは稀です。だから、いつもは作家としての喜び(書くだけ書いて、誰かが上演してくれる)といった喜びを味わったことがありません。その日本でもありえないことが、ここ韓国で実現したことが、本当に驚きですし、幸せに思います。

この『農業少女』という作品は、題名とは裏腹に「都市」について語られたものです。おそらくこのソウルにも毎年、たくさんの「都市」に憧れた若者がやってきては、「都市」の欲望に巻き込まれ、夢を見ては挫折をし、「都市」を愛しては憎んでいく、そうした小さなドラマが繰り広げられているのだと思います。

「都市」の魔力は、人間が実際に住む「ふるさと」の形を変えたばかりではなく、人の心に住む「ふるさと」の形まで変えてしまうものです。その心の中の「土地」が、形を変え破壊され、取り返しがつかないことを知った時、初めて人は、その喪失感に気がつくのだと思います。
人間が持つこうした喪失感は、おそらく、日本でも韓国でも違いはないと信じます。

「夢を見ることは、何かを失うことだという」残酷は、すべての人間に共通のものだと思います。
だからこそ、海峡を越えて、こうして韓国で上演していただく意味があるのだと思います。かつては日本語で書かれた日本の話が、今はれっきとした韓国の話になることができるのだと信じます。

そして、もう一度改めて、この作品の上演にご尽力をいただいたすべての韓国の仲間に心から感謝を申し上げます。