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第47回岸田國士戯曲賞選評(2003年)


日本の漫豪

われわれより少し上の世代あたりから、漫画というものを、とてもよく読むようになった。日本の漫画は今や世界的に見ても大きな力を持つ文化だ。当然、その影響力は日本のあらゆる文化におよんでいる。小学生の展覧会の絵などを見ても、およそわれわれの時代には許されなかったお目々パッチリの絵が並んでいる。文学然り、そして日本の戯曲においても、もはや漫画の影響力は否定しがたい。
中島かずき氏は、漫画の原作を書いていたという出自からもわかるように、いよいよでてきた、そうした劇作家の本格派である。
善悪をはっきりと描き、誇張と省略を用い、近代的な人間の心理描写を無視する。そして明らかに「見られる戯曲」としての意識がある。その意味で歌舞伎の脚本に通じるものがある。
コトバでは、人間の明と暗、人間の光と陰を書いているのだが、実はすべて説明され、陰の部分にも光が当てられる。
漫画が、短絡的であるというそしりをのがれられないように、彼の作品にもそうした批判が集中することは想像できる。
だが文化というものは、今一番力のある表現形態と共に再生していくものだ。こうした新しい、今迄ありえなかった戯曲が、この先どうなるか? とか、今の文化を短絡的なものにさせるのではないか? とか、そうした心配をする前に、われわれは文化の現況を、彼のようにひきうけるべきである。中島かずき氏は、誰とも違うものを書いて、そして、面白い。筆にも勢いがあり、短絡的とは云ったものの、粘り強く説明し、善悪ものとしての矛盾がない。だから彼独特の「裏切り」のキャラクターというものが生まれる。今後も、ロシアの文豪の如く日本の漫豪としてもっともっと書き殴っていって欲しい。